2012年1月に読んだ本他 まとめ

 はてダ絶賛放置中のk-pです。一日一冊を継続したがための、それは不可避的な結果でしたが、だからこそ一日に一冊を読破するということが続けられているのだと、自分を納得させている今日この頃です。だって昨年、俺が読んだ本の数何冊だと思います? 七十八冊ですよ七十八冊!*1 比較すると今月はそれの四分の一程の冊数を読んだのですから、記事更新を怠っている自分は寧ろ褒められるべきなんじゃないかな、とか言ってみます。
 前置きはこれ位にして於きまして、先月読んだ本の纏めになります。試験的に“「まとめ」テスト版”を使ってみました。案の定下に長くなりすぎてしまいましたので格納しました。スクロールが煩わしいとは思われますが、皆様の反応を見つつ(そんなものはこのダイアリーで殆んどある訳がないのだが、まあほらこういう物は取り敢えず言っておくべきでしょうから)来月以降記事をどうやっていこうか考えていく積もりです。
 それではどうぞ。


1月の読書メーター
読んだ本の数:22冊
読んだページ数:7452ページ
ナイス数:25ナイス

兇天使 (ハヤカワ文庫JA)兇天使 (ハヤカワ文庫JA)
オールタイムベスト級、どころか、私的オールタイムベストになった。もうとにかくすんごいしとにかく面白い。小道具・大道具・構成・トリック・オマージュ・カタルシス・歴史・政治・耽美・愛憎・官能・SF・ミステリー・ファンタジーetc……どれを取っても素晴らしいとしか言えない。大森さんの解説文にも書かれていたが、ジャンルを軽々と超越していて俺の頭ではどこがどうと判断ができない。それでもSF読みにお勧めしたいのだけど、作品柄誰に勧めたらいいのかも分からない。こんな本、2度とお目にかかれません。超大傑作でした。
読了日:01月07日 著者:野阿 梓
魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 3 (MF文庫J)魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 3 (MF文庫J)
在り来たりなキャラクターや如何にも中学生が好みそうなエロ要素に偏向しすぎのMF文庫J作品と比べると、こちらは安易な記号化された萌えは少ない上に血生臭い描写も敬遠されず用いられているが、それ故にか、展開は滅法面白い。戦闘シーンの引き出しがもう少し増えれば厚みは増す感じがするのだけれども、MF文庫Jならページ数の制約もあるし、サクッと読みきれるという長所とのトレードオフと考えるのが妥当だろう。何れにせよ、途轍もない傑作ファンタジーになるであろうシリーズとして次巻も期待したい。
読了日:01月11日 著者:川口士
ハレーション・ゴースト (妖精作戦 PARTII) (創元SF文庫)ハレーション・ゴースト (妖精作戦 PARTII) (創元SF文庫)
主に元ネタになっている漫画・アニメ作品が大好きな俺にとって御褒美以外の何物でもない作品だった。オマージュ元が好き過ぎてという意味ではこの作品を冷静に評価できていない、ということを前置きにするとして、その、オマージュしても勿論そうなのだけれども、1巻にあった主人公の勢い(熱)みたいな(小川先生の解説文序盤に書かれているような)ものはこれにも顕在しており、シリーズとしても十二分に楽しめた。また、リアル中学生の時にこれを自分が読んでいたら、そこそこ苦い思い出として残る青春物の作品だろう、とも言えると思った。
読了日:01月12日 著者:笹本 祐一
星刻の竜騎士Ⅵ (MF文庫J)星刻の竜騎士Ⅵ (MF文庫J)
第二部開始。1巻から仄めかされていたとあるキャラやそれに関係するその他の新キャラ登場、主人公の成長っぷりなどから、シリーズが好調である事が伺える6巻だった。前巻までの触手は鳴りを潜めているものの、お得意のサービスシーンは顕在であると同時に、主人公への意識の変化もあり、様々な意味でレベッカの本気だと感じた。また今後強大な壁として立ち塞がるであろう人物も新たに仄めかされていて、今後の展開が大いに気になるところ。安定のファンタジーシリーズとして、一先ずは次巻の決勝篇に期待だ。
読了日:01月13日 著者:瑞智 士記
神狩り (ハヤカワ文庫JA)神狩り (ハヤカワ文庫JA)
“神を狩る”というタイトル・テーマの衝撃さと、古代言語のガジェット、儚くも希望が垣間見られるラストが見所の作品。しかし正直に言って強く惹かれるほどの作品ではありませんでした。作家の初期作故か、魅力であると同時に欠点である事も否めない荒削りな印象が矢張りあって、他作家にも在りがちな荒削りが長所でも短所でもある初期作品を幾つか読んだ事がある身にとって、これはそこまで……という感じです。もう少し若い時に出会っていれば、また感想が違ったかもしれません。
読了日:01月14日 著者:山田 正紀
魔法科高校の劣等生〈4〉九校戦編〈下〉 (電撃文庫)魔法科高校の劣等生〈4〉九校戦編〈下〉 (電撃文庫)
九校戦編終了。達也のみならず様々な人物の力を実感する事が出来た巻だった。その中で、新たなライバルや強大な敵と相見えたり、様々な魔法能力が如何様なものかという点が特に興味深かった。兄と妹とのイチャイチャっぷりをもっと見たかった気もするが、九校戦編で最も盛り上がる部分が書かれている巻でもあったので、そこは致し方あるまいと思いつつ。次巻の新作書き下ろし有の短編集にその部分を専ら期待したい。
読了日:01月15日 著者:佐島 勤
果しなき流れの果に (ハルキ文庫)果しなき流れの果に (ハルキ文庫)
「縦横無尽なスケールの大きさ」と書くと逆に作品が陳腐に思えてしまうくらいの壮大さを持っていた。また認識と時間、人間と宇宙の考察と問いかけは当然現在も含めたこれ以降の作品(小説以外にも様々)にも通ずるものがあり、如何に墓標的であったかは推して知るべきだろう。時間テーマの扱い方(歴史云々の件)は処女作から一貫しているとのことなので、他の作品も読んでみようと思う。/完全に余談になるが、RPGゼノギアス』が好きな人はこの作品、マジで読んだ方がいいと思います。まんまです。
読了日:01月16日 著者:小松 左京
ミニスカ宇宙海賊 2 黄金の幽霊船 (朝日ノベルズ)ミニスカ宇宙海賊 2 黄金の幽霊船 (朝日ノベルズ)
1巻ではまだ表層しか書かれていなかった海賊船の仕組みや人員などが具体的に描かれ、愈々本編に突入したということが伺える巻だった。と言っても今のところお話自体は1話完結(1冊完結)という体裁で、シリーズが1つの直線で繋がっている、最後まで読まなければ分からないシリーズという印象はない。飽く迄も副題がメインとなっていた。氏らしい、艦隊戦や宇宙の描写は熟練した文章も相まって、ガチでSFをやっているのだけれども読み易いと同時に読み応えがあった。様々なネタを詰め込んだ面白いシリーズとして、次巻も期待。
読了日:01月17日 著者:笹本 祐一
百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫JA)百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫JA)
兎にも角にも滅びの美学・美意識の描写が破格。どの章の描写も凄いんだけれども、これ程までとは思わなかった。また、仏教的な彼是が宇宙論と交錯しているあたりは、日本人(東洋人)でなければ書き得ないと断言できるものだった。ラストシーンのとある人物の描写はこの手の壮大な小説だからこそ、ありがちとは言え本当に切ないこと請け合いになっていて特に大好きなんだけれども、ただそれは、人間という本当に本当に小さな存在が観測し得ないほど広大な宇宙に存在していることの一つの比喩なのではないか、とふと思った。
読了日:01月18日 著者:光瀬 龍
ミニスカ宇宙海賊3 コスプレ見習海賊 (朝日ノベルズ)ミニスカ宇宙海賊3 コスプレ見習海賊 (朝日ノベルズ)
いつも通りだけど、本当にタイトルに偽りなしの巻だった。素人だけで動かす宇宙海賊船、ちゃんと動かせるようになるまでの描写が地味ながらも丁寧に書かれており、矢張り面白いものだった。そして何よりも、オチがアレだったこと。2巻のときも思ったが、こういうオチを用意するのはさすがベテランだよなぁ、と。途中まで全く気付かせずに最後、無理のない範囲で納得できるようなオチをポンと置いていく手腕は上手いと言わざるを得ない。娘海賊の二度目があれば、その時は非常に期待して読みたいと思う。
読了日:01月19日 著者:笹本 祐一
秋の牢獄 (角川ホラー文庫)秋の牢獄 (角川ホラー文庫)
ぼちぼち。文章はいいし、やりたいこともやっていることも狙いも分かるのだけれども、どうにも惹かれなかった。ただそれは、決して上手くないというわけではない。/初めての恒川作品で、面白かったら他の作品にも手を出してみようと思っていたが、今となっては特に読まなくてもいい気がしている。
読了日:01月20日 著者:恒川 光太郎
遺跡の声 (創元SF文庫)遺跡の声 (創元SF文庫)
粒揃いの連作短編集。解説にもある通り、理系作家らしいガジェットを多用しているが、展開仕立てが非常に上手いので楽にスラスラと読めた。銀河の果てで、孤立し人知れずそこに存在していた遺跡ひいては文明へ、様々なアプローチで迫るストーリーは特に見所だった。詳細としては、20年近く間が空いていれば仕方がないとはいえ、「渦の底で」はどうしても書き方が違う(いやまあ同じなんですが、違うんです)とは感じた。マイフェイヴァリットは太陽風交点(第1回日本SF大賞作)、ペルセウスの指、遺跡の声の3作品。傑作でした。
読了日:01月21日 著者:堀 晃
ミニスカ宇宙海賊4 漆黒の難破船 (朝日ノベルズ)ミニスカ宇宙海賊4 漆黒の難破船 (朝日ノベルズ)
前後巻の前巻にあたるとのこと。今回は弁天丸を離れ、今まで小出しだった学園の練習船の設定が大いに活かされつつ、今回の巻で初出の謎と絡めての話でした。恐らく今迄のシリーズの中で一番純粋な、ジュブナイルスペースオペラは中々面白かった。最後の最後で書かれた驚きの展開は気になるところ、後編の巻に期待です。
読了日:01月22日 著者:笹本 祐一
タウ・ゼロ (創元SF文庫)タウ・ゼロ (創元SF文庫)
素晴らしい! 途轍もない大傑作! とりわけ100ページに書かれている「タウとは静的なものではなく動的なもので、それは人間が宇宙に飛び出したことによる絶えない変化と同等だ」という文章が、この作品の全てをたった一文で表していると思います。宇宙SFとそこに放たれた人間による関係がこれ以上に無い程上質に絡み合った、正しく、真の意味でのハードSFの金字塔と断言せざるを得ない内容でした。また言うまでもない事でしょうが、浅倉さんの訳、後書、金子さんの解説もまた、どれを取っても満足出来ました。オールタイムベスト級です。
読了日:01月23日 著者:ポール アンダースン
ミニスカ宇宙海賊5 白銀の救難船 (朝日ノベルズ)ミニスカ宇宙海賊5 白銀の救難船 (朝日ノベルズ)
前後編だと思っていたら実は前中後編だったでござるの巻。前回の気になる終わり方の続きなので、専ら艦隊戦なのだけれども、粗筋にもあるように母娘による共同戦線が読み所だった。さて次こそは終わるだろうけれども、どうやって話を落とすのかが見物だ。
読了日:01月24日 著者:笹本祐一
たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)
連作中篇集。二転三転し兎に角読者を惹き付ける展開とそれに裏打ちされた至極簡潔なアイディア、そして温かみがあるように見せかけての静かな感動と、時にはほろ苦さをも持ち合わせるストーリーラインが見事に融合した傑作。素晴らしかったです。またそれを表現する浅倉さんの訳は本当に職人技だと思います。ぐいぐい読めました。個人的には超好みなお話ばかりで、3篇共に甲乙付け難い……大好きです。これがこの人の遺作かと思うと、残念でならないです。他の作品も読んでみます。
読了日:01月25日 著者:ジェイムズ,ジュニア ティプトリー,浅倉 久志,ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
ミニスカ宇宙海賊6 真紅の海賊船 (朝日ノベルズ)ミニスカ宇宙海賊6 真紅の海賊船 (朝日ノベルズ)
4巻から続いたエピソードの完結巻。まあこんなものか、という程度だけど艦隊戦のやり取りは中々面白かった。黒幕も明かされての展開はなるほどなーと。主人公が脇役に食われるのは、妖精作戦を2巻まで読んだ俺にとって予想出来得ることだったのであまり問題にはならなかった。そしてまたしても次巻以降でネタに出来そうなことを仄めかしつつ終わらせたのも、笹本作品の特徴なのかなあ、と思った。
読了日:01月26日 著者:笹本祐一
結晶世界 (創元SF文庫)結晶世界 (創元SF文庫)
訳者あとがきに書かれている内容が非常に的確なので、特別に語り得る事を持ち得ないでいる事は否定出来ないが、個人的に『たったひとつの〜』等に代表される、所謂“普段SFを読まない読者層にこそお勧めしたいという評価が多い作品”に分類されるのではないだろうかと強く感じた。表紙やタイトルで如何にもファンダム向けな感じがするし、作者を調べればニューウェーブSF云々という功績は直ぐに判明するだろうが、キーワード・作品傾向として退廃、男女関係、幻想小説辺りが挙げられるので、それらに惹かれる方へ是非お勧めしたい1作。
読了日:01月27日 著者:J・G・バラード
ミニスカ宇宙海賊7 蒼白の髑髏星 (朝日ノベルズ)ミニスカ宇宙海賊7 蒼白の髑髏星 (朝日ノベルズ)
新章開幕といったところか。前巻までの某エピソードはそこまで強く惹かれるものではなかったのだけれども、今回はわくわくしながら読んでいた。2、3巻辺りの面白さが再びという感じなので、次巻以降に期待。しかし前巻までと同じ値段ならばもう少しページ数を増やして欲しいということは否めなかった。まあ区切りのいいところで切っているのだろうけれどもね。
読了日:01月28日 著者:笹本祐一
分解された男 (創元SF文庫)分解された男 (創元SF文庫)
素晴らしい、傑作。どの要素をとっても不足がないどころか、むしろいろんなものが溢れている……んだけれどもこのすっきり具合というか嵌り具合に瞠目する他ない。序盤からぐいぐい読ませていくスピード感満載の展開と、途中ダレもなく最後はきっちり鮮やかにまとめ上げているのはお見事。また少々のタイポグラフィもあり、それが劇中の設定と合致しており読み応えは抜群。SF読者ミステリ読者どちらにもお勧めできる作品です。
読了日:01月29日 著者:アルフレッド・ベスター
龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)
プロローグであり出会いの巻。ただ“出会いは別れの始まり”という言葉が指し示すように、それとなく暗示している部分は、その部分まで到達するのに経た2人の290ページ程のプロローグの、巧みで大胆で綿密な過程があるからこそ、またそれをあの(!)秋山瑞人が筆を執っているからこそ、最後の切ないであろうと想像出来る場面が既に何となく頭に浮かんでしまうわけで、こりゃ厄介な作品(褒め言葉です)に手を付けてしまったぞ、と思わずにはいられない。
読了日:01月30日 著者:秋山 瑞人
プリズム (ハヤカワ文庫JA)プリズム (ハヤカワ文庫JA)
連作短中篇集。いつもの神林作品だった、と言えば分かる人には分かるだろうがそれはさて置き。/将にタイトルが“全て”を表していた。とあるモチーフを、角度を変えて様々な視点から……という事を一つひとつの話で魅せていく作品。でも翌々考えてみると、ある意味、神林作品全般それ自体が常にそういう事をしている訳で、この作品はそれを唯一つの連作小説でやってのけた、と言っても良いんじゃなかろうかという気がする。/前島さんの神林愛に感服しつつ、神林作品の解説として非常に的を射ていました。一読の価値は有り、でしょう。
読了日:01月31日 著者:神林 長平

2012年1月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター


 以上です。
 この中で特に(至極私的に)お勧めな作品は
兇天使
タウ・ゼロ
たったひとつの冴えたやりかた
分解された男
の4作品です。どれもクオリティーには折り紙をつけるので、数寄者なSF読みはどうぞ。


兇天使 (ハヤカワ文庫JA)

兇天使 (ハヤカワ文庫JA)

タウ・ゼロ (創元SF文庫)

タウ・ゼロ (創元SF文庫)

分解された男 (創元SF文庫)

分解された男 (創元SF文庫)