神狩り 感想

 “日本SFの至宝”という帯の宣伝文句と、何より『神狩り』というタイトルに惹かれて購入、読了しました。

 うーん……“神を狩る”というタイトル・テーマは衝撃だったし、展開が非常に気に為る所ではありました。古代言語というガジェットも、作中での神を狩るとの関連性も相まって知的好奇心が揺さぶられた事は間違いなかったですし、それを乗り越えての、儚くも希望が垣間見られるラストは確実に見所であったと言えるのですが……しかし正直に言って、そこまで強く惹かれるほどの作品ではありませんでした。
 矢張り、作家の初期作品である故の事なのでしょうけれども、魅力であると同時に欠点である事が否めない荒削りな印象は少なからずありました。そして同様に、他作家にも至極在りがちな、荒削りが長所でも短所でもあるこれと似たような初期作品を幾つか読んだ事がある身にとって、これはそこまで……という感じです。もう少し若い時に出会っていれば(今でも若いのだけれども、もっと若い時)、また感想が違ったかもしれません。ただ、処女作(厳密には違うとのことだが、一先ずはまあ良いでしょう)でここまでの長編を書ける人は、今でもそういないでしょう。そういう意味で、山田正紀という作家は凄いな、と言わざるを得ません。
 他の山田正紀作品で幾つか気になる作品が在りますので、今後機会があれば、読んでみます。


神狩り (ハヤカワ文庫JA)

神狩り (ハヤカワ文庫JA)