青の炎 感想

 ここ1週間は貴志祐介の作品にずっと触れていた。自分にとって3作目、筆者にとっての5作目となる小説、それが青の炎。
 犯罪者側から描くミステリー。犯罪方法については違和感を覚えざるを得ないが、あくまでそれは話をみせるための方法に留まっているものであって、ストーリーの目的自体は別にあるということから鑑みると特に不満ではない。
 黒い家、天使の嘲りは共にホラーとして世間に知られているけれども、実際に読んでみて、俺としては日本の社会における現状に対しての若干の風刺をしているという部分も否定できなかった。しかしこの青の炎は、少年犯罪を批判しているわけではないし、ましてや現在の日本の警察事情を批判しているものでもなく、ただ単に、犯罪を通じた高校生の、家族や恋人との絆と最期を描いた物語だ。
 若いながらも必至に守ろうと思考を巡らせもがいた高校生と、彼を取り巻く家族や友人、恋人との絆を胸に抱いてのあのラスト。読後感が何とも切なくなること請け合いな話だった。

青の炎 (角川文庫)

青の炎 (角川文庫)

 さて、次はお待ちかねの『新世界より』を読むぞ。