あなたの魂に安らぎあれ 感想

 昨日、読了しました。話の概要や解説は省略。自分語りと雑感だけ書きます。


 俺が神林作品で読了済みなのは、長編が戦闘妖精雪風<改>、完璧な涙、我語りて世界あり。短編(集)が言葉使い師、狐と踊れの計5作品(冊)でした。それらと比較すると、この『あなたの魂に安らぎあれ』は非常に、読んでいて思わず苦笑してしまうくらい非常に平易な内容でした(苦笑)。まあ、先ほど挙げた5作品を読んだのは約2年前になるし、その時は神林作品とは〜・SFとは〜といったこと等を全く意識せず無知で読んでいたし、……今ではそこそこ読み物自体を読むようになったこともあり、当時よりは自然と様々な思考を巡らさせるようにはなりましたが、それでも読みやすい部類なのは間違いありません。(ここでいう平易や読みやすさとは文体ではなく、展開が分かりやすいことを指しています)
 内容としましては、全般にわたって群像劇で様々な人物を描写しエピソードを重ねていくことで、劇中の世界におけるとある真実が次第に明らかになっていきます。やや使い古された核心/ネタではありましたが、四半世紀前に(数えてみたらそんなに前でした!)書かれたものということを考慮しても、十分読むに耐え得る面白さがあります。さすがは神林作品と言うべきでしょう。物語最後部分では、独特の切なさと、SFといえばこれとも言える某動物の可愛さも相まって、読み耽ってしまいました。ここは特に堪りませんでしたよ。
 また言うまでもなく、神林作品を語る上で外すことの出来ない通底的テーマ/アプローチは、本作品も多分に漏れず顕在でした。地下に住む人間と地上に住むアンドロイドの関係の描かれ方は、まさに神林作品ならではのものとなっています。ただ、俺が読んだ作品と比べるとそこまで強くはない印象です。前述の、内容は他の作品と比べると平易だと感じた理由は、ここにあるのかも。
 この作品は火星三部作の1つだそうで、ほかに『帝王の殻』と『膚の下』があります。『あなたの魂に安らぎあれ』は三部作の中で一番早く刊行された作品ですが、どうやら時系列的には最後の話だそうです。加えてこれを読んだのならば『膚の下』は読むべしとの情報を得たので、次に神林作品で読むとしたら『膚の下』になるでしょう。いつになることやら。


 以上です。


あなたの魂に安らぎあれ (ハヤカワ文庫JA)

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