君に届け 11巻 感想

 ネタバレありなので格納します。


 先日の日記でも言っていたように、10巻で風早と爽子が恋仲として結ばれてから、以降の巻は正直言って蛇足だろうとずっと思っていました。作品名が『君に届け』なんだから、“君”に“届いた”時点でこれ以上にないほどのいい終わり方じゃないのかと。
 俺はこの君に届けという作品を、1巻を読み終えた時点で、既に爽子の恋愛物語である以上に爽子の成長物語であると強く意識していました。その意識は今でも変わっていません。ただよくよく考えてみると、たしかに10巻までの間に爽子は風早をはじめとする“友達”と触れ合っていく中で、これほどにないまでに成長しました。しかし、風早と結ばれるということそれ自体はあくまで通過点にすぎないのではないか、まだまだ爽子は読者が考えもつかないところまでの高みに登っていくのではないか、というある種の期待というか願望のような考えが次第に生まれてきました。
 もうこの時点で、俺のするべき行動は一つしかなかった。最後まで、爽子の成長を見届けずして君に届け好きは語れないな、と。
 ……とまあなんとも堅苦しいんですが、大体こんな感じですね。で、実際読んでみてどうだったかというと、付き合うことの難しさが描かれているわけなんですが、他の少女漫画(――と言ってもそんなに俺はたくさん読んでいるわけじゃないんですが)と違う点、つまり君に届けという話だからこそ描ける付き合うことの難しさ、爽子自身の葛藤があって、例えばそれは胡桃沢の「ライバルで良かった」発言だとか、風早とのデートの際の「一緒にいる事が普通になれたらいい」発言なんかに表れているんじゃないかと。爽子と胡桃沢の関係とか、風早と接していくうちに変わっていった爽子の心情とか、いつかまとめたいな。
 あとは、あやねと千鶴のそれぞれの恋愛模様だとかも気になる小エピソードではありますね。椎名先生ならばいずれ、ある程度の決着をもって描いてくれることだろう。
 そうそう、なぜ“あの”10巻の次の巻の11巻の表紙が胡桃沢とあやねなのか。これはもう、11巻を読んだ人ならばなんも疑問に思うところはないでしょうね。10巻にまして、いい表紙だと思います。


君に届け 11 (マーガレットコミックス)

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