金属バットの女 感想

 第9回HJ文庫大賞の特別賞受賞作ということで読んでみました。
 あらすじはこちら。

5月のクソ暑い日、ど田舎の駅のホームで世界一可愛い女と出会った。次の日、夕方に目覚めると家族が殺されていた。親父、かーちゃん、兄貴、妹、じじぃ。全員だった。そんで、そこには金属バットを持ったあの世界一可愛い女が立っていた。驚くとにそいつは『試験官』っていう世界を滅ぼす化け物から人類を救う選ばれた女って話だった。*1

 まず、作者は1992年に青森県に生まれた方で、早稲田大学卒業とのことです。
 冒頭のカラーページにはこんな台詞があります。

「だいじょうぶじゃない」
 具合の悪い椎名有希も色っぽくて可愛かった。
 最高だった。完璧だった。マジックリアリズムだった。

 僕は早稲田大学卒業の作者と違ってFラン大学卒の身。マジックリアリズムという単語がわからなかったので調べてみました。

 全体としてありえないような幻想的な事柄に、自然主義的に猥雑で即物的かつ具体的な細部の描写を積み重ねることで、不思議なリアリティを与える技法、作風*2

 へえ。


 とりあえず読み進めてみました。
 ストーリーは、世界を滅ぼす13体の試験官という存在が1体ずつやってくるたびにぶっ殺し、人類を救おうとしているが、同時になんら関係のない人間がすれ違ったり、イラッとしただけでぶっ殺していく世界一強くて可愛い金属バット持ちの少女と、その少女に家族全員皆殺しにされた「くそ(ったれ)」「ファック」が口癖の少年が出会い、そして始まる同棲生活と、その果てには、という内容です。
 特徴としては、少年がとにかく少女が可愛い、好きだ、惚れているということを頻りに連呼します。家族が殺されたけれども、そんなプリチーガールが好きだから、特に何も言いません。しかし少女のどういったところにそう感じているのか、これといって書かれていません。なので、「少年がそういうならそうなんだろう。少年の中では」と僕は思いました。また、少女がなぜ世界を滅ぼす存在に対抗でき得る力を持っているのかという疑問を持ったんですが、「たまたまそういう力を持っている」存在だかららしいです。イカしてますね。
 そんなこんなで展開、テキストともに中々イカれてる印象を受けましたが、テンポはよく、言い回しが難解だというところも特にありませんでした。ただ後半につれて、イカれている感じが薄れ、主人公の内面描写が中心となってくると、特に読みにくいわけではないけれども、目が滑ってしまった。最後に主人公が最後にとった行動も、よく理解できませんでした。
 あと「うんこ」「肛門」「ケツ」「くそが漏れる」という比喩表現がほぼ数ページに1回くらいの頻度で使われていて、何かのメタファーなのかなと思ったりもしたけど、よくわからなかった。そもそも目次からして「前衛的脱糞講座」とか「ケツ毛オリンピック2020」「尻拭いという名の結末。ケツにうんこはついてるか否か?」という文字列が並んでいて、うんこ推しを感じました。
 極めつけは作者の後書き。正直言って本編以上に何を言っているのかわからない。ともすれば痛いの一言で片付けられてしまうと思います。


 以上。まぁ読まなくてもいいかなと思いました。

金属バットの女 (HJ文庫)

金属バットの女 (HJ文庫)