2010年に読んだ本

 2011年になった当初、昨年に読んだ本のランキングを作ろうかという計画があったんですが、昨年に発売された本ではない本を主に読んでいたという理由で没となっていました。実際、昨年読んだ59冊のうち、ハードカバーの文庫化されたものを除くと昨年に発売された本は13冊に留まっています。読んだ本の年間ランキングは、新作(正確には、一般文芸であればハードカバーの文庫化ではない新刊、いわゆるライトノベルレーベルからの本であれば文庫本そのままですが)でやらなければ意味がないと今日まで思っていました。
 しかし、この『止まり木に羽根を休めて』さんのこれらの記事に触発されて、俺も作ってみようかなと気が変わりました。そこで、以下の手順と具体的内容で2010年に読んだ本ランキングをまとめます。

  1. 昨年読んだ本の一覧
  2. ノミネート選考
  3. 結果発表

 1は読書メーターのまとめ機能を使います。2と3は、『止まり木に羽根を休めて』さんの記事を概ね踏襲することにしました。
 具体的な内容について。1は昨年読んだ本の冊数や作品名や感想の抽出したものをそのまま載せます。2は、1で抽出したものの作品名だけを羅列し、ノミネート作品を選考します。『止まり木に羽根を休めて』さんの記事では作品をジャンル別に分類しノミネート作品を発表していましたが、ジャンルが跨っている作品もあることから俺の記事ではその区分方法は無しとします。この点は『止まり木に羽根を休めて』さんの記事と若干の差別化をするという意味でも有効でしょう。3は名前のごとくランキングの発表です。作品名だけでは味気ないので、振り返った今だからこそ言える作品に対しての一言コメントのようなものをつけます。この記事をあとから読み返した際に何かしら思うところが出てくるんではないかという試みでもあります。
 これら1〜3の作業を記事3回分に分けて行います。記事3回分と言っても、俺のブログ更新は1記事1日1回のみが基本ですので、3日に分けて行うと考えてもらって結構です。なぜ3回分に分けて行うかと言えば、1つの記事に1〜3の全てを書くと長大になってしまうからです。また、ノミネート選考と結果発表の際の一言コメントを考え書く時間が欲しいので。
 では、1の昨年読んだ本の一覧です。


2010年の読書メーター
読んだ本の数:59冊
読んだページ数:18445ページ

絶対女王にゃー様 (ガガガ文庫)絶対女王にゃー様 (ガガガ文庫)
さいろーだからこういう中身でもいいと思う けど実質、下手に中二しているラノベよりもよっぽど中二してる中身だった 拒否反応起こす人はいるだろうね・・・
読了日:01月14日 著者:J・さいろー
バベルの薫りバベルの薫り
とにかくエロい。しかしながらそれ抜きにしても面白かった。
読了日:01月15日 著者:野阿 梓
ソドムの林檎ソドムの林檎
表題作『ソドムの林檎』は中々に良いと思った。やはり野阿梓本人が言っているように、氏は中編以上の長さの作品が光るように思う。それだけに短編2編はもっともっと続きが欲しいな……と思わざるを得ない。また、氏特有の淫靡な描写が足りなかったようにも思う(『バベルの薫り』が凄まじかっただけに)。
読了日:02月17日 著者:野阿 梓
サロメ (岩波文庫)サロメ (岩波文庫)
読了日:02月20日 著者:ワイルド
ハムレット (新潮文庫)ハムレット (新潮文庫)
読了日:02月22日 著者:シェイクスピア
少年サロメ少年サロメ
読了日:02月23日 著者:野阿 梓
魔天楼 薬師寺涼子の怪奇事件簿 (講談社文庫)魔天楼 薬師寺涼子の怪奇事件簿 (講談社文庫)
読了日:02月24日 著者:田中 芳樹
東京ナイトメア 薬師寺涼子の怪奇事件簿 (講談社文庫)東京ナイトメア 薬師寺涼子の怪奇事件簿 (講談社文庫)
読了日:02月25日 著者:田中 芳樹
ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。 (一迅社文庫)ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。 (一迅社文庫)
読了日:03月22日 著者:朱門 優
ずっとお城で暮らしてる (学研ホラーノベルズ―恐怖少女レクション)ずっとお城で暮らしてる (学研ホラーノベルズ―恐怖少女レクション)
読了日:04月01日 著者:シャーリイ ジャクスン
カオス レギオン 聖戦魔軍篇(富士見ファンタジア文庫)カオス レギオン 聖戦魔軍篇(富士見ファンタジア文庫)
ストーリーや設定は有りがちだけどこんなにも面白く、ドキドキハラハラさせられるとは思ってもいなかった。キャラクターもたっていて魅力的。テキストはライトノベルに有りがちな軽い文章ではなく、しかし重すぎもせず、非常に読みやすかった。挿絵は話にマッチしていて申し分ない。ファンタジーライトノベルものとして万人にお勧め出来る一作。
読了日:04月06日 著者:冲方 丁
イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)
読むなら文庫よりもこっちのハードカバーの方をお勧めする。読者は表紙・表紙裏・目次から既に試されています。ちなみに文庫には後ろの方に解説がついているが、ネット上でとても丁寧に解説しているサイトがあるので、結局どういうことなの? と思った人も大丈夫。あと、「必ず二回読みたくなる」って煽り文句があるけど、「全貌を理解するための確認のために二回」読みたくなるのであって、「話自体が面白いから」二回読みたくなるというわけではない、ということも注意すべき点。コメントに続く→
読了日:04月09日 著者:乾 くるみ
さくら荘のペットな彼女 (電撃文庫)さくら荘のペットな彼女 (電撃文庫)
著者の前シリーズ『kaguya』はバトルものだったけど、こちらは異能力も何も出て来ない、ひたすらにキャラとキャラがボケと突っ込みを繰り返す、さっと読めるラブコメ。シリアスもいい具合に入っている。あと前シリーズでもそうだったんだが、鴨志田の書く女の子の描写が、妙にえっちぃんだよね、シチュエーションも含めて(例えばずぶ濡れのYシャツから透けて見える体、とか)。
読了日:04月11日 著者:鴨志田 一
カオス レギオン0 招魔六陣篇 (富士見ファンタジア文庫)カオス レギオン0 招魔六陣篇 (富士見ファンタジア文庫)
読了日:04月11日 著者:冲方 丁
甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)
読了日:04月12日 著者:山田 風太郎
狼と香辛料〈5〉 (電撃文庫)狼と香辛料〈5〉 (電撃文庫)
読了日:04月13日 著者:支倉 凍砂
銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)
読了日:04月15日 著者:田中 芳樹
僕は友達が少ない (MF文庫J)僕は友達が少ない (MF文庫J)
「隣の芝は青い」とはよくいったもので、友達が大勢いて楽しくわいわいガヤガヤとやっているのを見ると、ましてや友達のいない彼らだ、色々と思う所があったんだと思う。けれども彼らには友達が「いない」から「少ない」になったのだ。そこから発展する友情、ひいては主人公との恋愛に注目できそうだ。
読了日:04月18日 著者:平坂 読
僕は友達が少ない 2 (MF文庫J)僕は友達が少ない 2 (MF文庫J)
読了日:04月19日 著者:平坂 読
グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
設定の支柱にある要素に真新しさはないが、仮想世界が存在する以前の、要するにバックボーンやデティールがしっかりしている。そしてそれを表現する筆力に驚嘆。非常に単純明快なプロットは、良く言えば基本に忠実、悪く言えば在りがちな本格SF作品。俺が特にこの作品で注目したい点は、グロテスク且つエロスであり不条理且つ残酷なSF小説だ、というところ。しかしながら、読み終わったあとに残る、この何とも表現し難いほどの清々しさ! 文章の巧みさも相まって五感の全てが刺激される! さて……※以下コメントへ続く→
読了日:04月23日 著者:飛 浩隆
僕は友達が少ない〈3〉 (MF文庫J)僕は友達が少ない〈3〉 (MF文庫J)
ギャグばかりの中にシリアスがそっと入っているからこそ、印象深いものになるんだよ! とか言ってみる。3巻の中で一番イラストの効果が感じられた。肉といい、最後といい。オチには確かにやられたけど、花火の話で何となく展開が分かってしまいましたね。このシリーズ、個人的には、それこそ金太郎飴的な感じで長く続いて欲しいけど、話自体が壮大でも何でもないので、あと2〜3巻で終わりそうな予感がする。というか、そこら辺で締めたほうがすっきりするのかもね。
読了日:04月24日 著者:平坂 読
聖少女 (新潮文庫)聖少女 (新潮文庫)
読了日:04月26日 著者:倉橋 由美子
クダンの話をしましょうか (MF文庫J)クダンの話をしましょうか (MF文庫J)
読了日:04月27日 著者:内山 靖二郎
さくら荘のペットな彼女〈2〉 (電撃文庫)さくら荘のペットな彼女〈2〉 (電撃文庫)
読了日:04月28日 著者:鴨志田 一
IS(インフィニット・ストラトス) (MF文庫J)IS(インフィニット・ストラトス) (MF文庫J)
俺はよく、法律で平成生まれの殆んどが使用を禁じられているウィンドウズ用アプリケーションソフトをプレイするんだけども、これを読んでて、一昔前のギャルゲーを彷彿とさせるお約束的展開といいハーレム感といい、如何にもそれっぽいなあと思った。そして後書きには以前ゲームのテキストライターだったと書いてあったから調べてみたら、業界でも最王手の古参メーカーに所属していたライターかも知れないという事が分かった。
読了日:04月30日 著者:弓弦 イズル
神明解ろーどぐらす (MF文庫J)神明解ろーどぐらす (MF文庫J)
読了日:05月10日 著者:比嘉 智康
ゆうれいなんか見えない! (GA文庫)ゆうれいなんか見えない! (GA文庫)
読了日:05月10日 著者:むらさき ゆきや
ダブルクロス The 3rd Edition  ルールブック1 (富士見ドラゴン・ブック)ダブルクロス The 3rd Edition ルールブック1 (富士見ドラゴン・ブック)
読了日:05月12日 著者:F.E.A.R.,矢野 俊策
ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)
読了日:05月14日 著者:古橋 秀之
ひぐらし荘の女主人 短篇セレクション 官能篇 (集英社文庫)ひぐらし荘の女主人 短篇セレクション 官能篇 (集英社文庫)
読了日:05月16日 著者:小池 真理子
薔薇いろのメランコリヤ (角川文庫)薔薇いろのメランコリヤ (角川文庫)
読了日:05月16日 著者:小池 真理子
欲望 (新潮文庫)欲望 (新潮文庫)
読了日:05月20日 著者:小池 真理子
恋 (新潮文庫)恋 (新潮文庫)
「この物語の全貌をこれから明かすが、内容は保障する。アッっと驚いてくれ」と言わんばかりの内容が序章で書かれている。言い換えればこれは小池真理子の予告ホームランである。物語の結論を最初に提示し、そのうえでちゃんと読者を引き付け最後まで離さないなど、平凡の天才が出来ることではないと思った。当時『恋』と共に直木賞にノミネートされた作品は本当に運が悪かったとしか、まるで言いようがない。満票を得ての推輓というのにも納得である。→
読了日:05月24日 著者:小池 真理子
無伴奏無伴奏
読了日:05月27日 著者:小池 真理子
蜜月 (新潮文庫)蜜月 (新潮文庫)
どのエピソードも、蜜のように甘い月ではないところにこの作品の魅力があるのかも知れない。「バイバイ」が一番好き。
読了日:06月01日 著者:小池 真理子
飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)
まえがきとあとがきは全ての大人に、訳者あとがきと解説は全ての物書きに是非、読まれるべきだと思う。
読了日:06月07日 著者:ケストナー
わたしたちの田村くん (電撃文庫)わたしたちの田村くん (電撃文庫)
とらドラ!でも思ったことなのだが、どうも竹ゆゆ作品には読者に強い印象を与える、感情の爆発するシーンがある。これを読んで、あぁとらドラ!の原型だなあと、実に意識させられた。他にも、「ここでその台詞くるか!」など、ニヤニヤが止まらなくなる部分もあって、面白い。例えば、第二話の最後のはがきでの台詞なんか、特にね。2巻目が楽しみだ。
読了日:06月10日 著者:竹宮 ゆゆこ
冬の伽藍 (講談社文庫)冬の伽藍 (講談社文庫)
とりあえず解説をもう少し解説らしくして欲しい。ただの――と言うのは少し語弊があるかもしれないと思うが――感想文もどきだよこれじゃあ。まぁ、足りない分は自分で読み終えた後に色々と考えればいいのだろうが(というか俺はそうした)。
読了日:06月14日 著者:小池 真理子
ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)
10年後再読したいと思う。今回読んで心に残ったページはP163・P171・P172
読了日:06月17日 著者:J.D.サリンジャー
ティファニーで朝食をティファニーで朝食を
表題作ではホリーが憎めず、他の3つの短編では終わり方が憎めない。俺にとってこの本は、そんな印象。
読了日:06月18日 著者:トルーマン・カポーティ
猫の地球儀 焔の章 (電撃文庫)猫の地球儀 焔の章 (電撃文庫)
宗教とSF(スペオペ?)。地球と月。途中でなんとなく気付いたが、やはりガリレオの一連の騒動を意識していたか秋山。正直あんまり……と思いながら読み進めていたが、P235から一気に引き込まれた。
読了日:06月20日 著者:秋山 瑞人
猫の地球儀〈その2〉幽の章 (電撃文庫)猫の地球儀〈その2〉幽の章 (電撃文庫)
SFという文芸がただひたすらに、清新であり、残酷であり、美しくあるという文芸ならば、これは紛うことなくSFの範疇に部類されるノベルである。一般文芸が格上でライトノベルが格下などとは露にも思っていない俺だが、それでもやはりこれは、一般文芸として(つまりは中高生以外の人にも)読まれてもいいのではなかろうかと思えてならないのだ。切に復刊を希望する。
読了日:06月21日 著者:秋山 瑞人
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
ネビル・シュートの『渚にて』が前世紀の核の恐怖に怯えた人類に読まれるべき小説であったのなら、『虐殺器官』は今世紀最初に起こったテロの恐怖を身近に感じた人類に読まれるべきそれだと思う。しかしこれは何も反戦を謳っているわけではない。我々が、「今、ここに」生きていくための小説なのだ。近い将来この小説は必ずや全世界に向けて発信されるだろうと確信している。作者が夭折なされたことが本当に悔しい。
読了日:06月25日 著者:伊藤計劃
りーち☆えんげーじ! -子孫繁栄! 国立栄華学園中等部- (GA文庫)りーち☆えんげーじ! -子孫繁栄! 国立栄華学園中等部- (GA文庫)
作者後書に「私は昔から妄想好きで、暇があればとりあえず色々と考えていた。この本はそんな妄想から生まれた」とあるが、少々強引な俺の「妄想」を働かせれば、作者は何らかの作品・作家に憧れて物書きになった訳ではないという裏返しにも見て取れる。とどのつまり俺が何を言いたいかというと、この作家はあまり長くは続かないのだろうなあと、変に勘繰ってしまいたくなるのだ(このシリーズが、ではなく、物書きとして)。続きはコメントで→
読了日:07月01日 著者:海堂 崇
完璧な涙 (ハヤカワ文庫JA)完璧な涙 (ハヤカワ文庫JA)
SenseをOffしたりOnしたりOffしたり、な小説。正直言って、ハードSFが好きで、かつ、神林長平も好きって人じゃないとお勧め出来ない。
読了日:07月01日 著者:神林 長平
あなたのための物語 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)あなたのための物語 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
皆の感想とは少し違ってあくまでも死を理不尽な物や悲しい物として書いていない(主題ではない)のが本書の特徴。帯には無機質・無感傷の情景と書いてあるが、死なんて所詮自他が悲しいと思うから悲しいものになっているのであって、死そのものに性質や感情などは存在し得ない。だからこそ、読者である我々は自分の物語を自分で物語らなければならず、またそうすることでわたしの人生に“なる”のだ。これは、我々が生きるための物語であり、まさに長谷敏司が我々に手向けてくれた物語……言い換えれば、『あなた(読者)のための物語』だ。
読了日:07月22日 著者:長谷 敏司
あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)
発想や着眼点が凄まじく、だがそれを支えるストーリーもよくできていて設定が一人歩きしていない。現役SF作家の最高峰というのは、読んでみれば分かるはず。もう、とにかくすごいんです。
読了日:07月26日 著者:テッド・チャン
アンチ・マジカル 〜魔法少女禁止法〜 (一迅社文庫 い)アンチ・マジカル 〜魔法少女禁止法〜 (一迅社文庫 い)
読了日:07月28日 著者:伊藤 ヒロ
紫色のクオリア (電撃文庫)紫色のクオリア (電撃文庫)
とある有名な詩人は言いました。「信じることは生きる源」と。テーマはこれだと思った。量子論というハードSFの王道ネタを用いており、ライトノベルレーベルから刊行されているものの、大人やSFマニアに、しかし青春小説としてライトノベル読者――つまりは若者――にもお勧めしたい1冊。エンターテインメントの枠に落とし込めているにもかかわらず、先にも述べたテーマ性もしっかりと感じことができることは、著者の力量を十二分に垣間見ることができる結果と相成っている。本当に、ただのライトノベルにしておくにはもったいない。
読了日:07月29日 著者:うえお 久光
僕は友達が少ない 4 (MF文庫J)僕は友達が少ない 4 (MF文庫J)
読了日:08月01日 著者:平坂読
空飛び猫空飛び猫
何故猫に翼が生えているのかではなく、どのように猫は翼を活かして何をしているのかということに重きをおいて読む話だと感じた。最後、人間と触れ合っているときには「ごろごろ」という台詞で猫の気持ちを表現しようとした、その訳文はさすが村上春樹だなあと思わずにはいられない。
読了日:09月15日 著者:アーシュラ・K. ル・グウィン
りーち☆えんげーじ!2 -子孫繁栄!国立栄華学園中等部- (GA文庫)りーち☆えんげーじ!2 -子孫繁栄!国立栄華学園中等部- (GA文庫)
ネタバレになるから詳細は書かないが、中性的な人物名(男にも女にもよく付けられる名前)を効果的に使っているなあと思った。頭を空っぽにして読めるような話で、そのように読んでいたからこそ、騙されてしまったという感じです。司は、龍馬が叫んだシーンから「まさか…まさか…」と思いつつ読み進めて実際予想は的中。最後の『アレ』は、少々唐突な展開だという事は否めないが続巻への伏線を残すという点を鑑みれば、まあアリだろう。あと、他の人も書いているけど最後の1ページでやっと話が進むので、これから読む人は留意した方がいいのでは。
読了日:09月20日 著者:海堂 崇
ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
まぎれもなくSF“小説”だと思うのだけど、これほどまでに迸る現実感を描写している、伊藤計劃の筆力に脱帽した。たしかにこれはノンフィクションだが、内容は我々が生きているこの世の中から乖離したものではないことに驚いた。いかに著者が現実をよりよく、時には理屈を以って見据え、見通しているかがよく分かる。虐殺器官では、その圧倒的な先見性に心を奪われたが、ハーモニーでは「いま、ここに在るもの」をいかに認識するかに、心の底から感動した。これで伊藤計劃は終わりだなんて……本当に、本当に夭折なされたのが惜しい作家だと思う。
読了日:12月19日 著者:伊藤計劃
僕は友達が少ない (5) (MF文庫J)僕は友達が少ない (5) (MF文庫J)
前巻に比べると続きが気になって気になって仕方がないという終わり方ではなかったけれども、全体としてはいつもの『はがない』らしさは健在だったので、シリーズとして見た時に落ち目だとかもう読まないということには全くならないかな、という感じ。また、ブリキの挿絵がカラー白黒共に素晴らしい出来だったので、学園祭編という内容も併せて、次にも期待したい。……でもぶっちゃけると『繋ぎ巻』なのは否めないかな。
読了日:12月20日 著者:平坂 読
神なる姫のイノセンス (MF文庫J)神なる姫のイノセンス (MF文庫J)
初のオリジナル小説ということで読んでみた。キャラ設定やテンポがよく、キャラクターのかけあいも十分笑えるものだった。PCゲームのシナリオライターでもある鏡遊だけど、元々小説に近い文章でPCゲームのテキストを書いている印象だったので、今回はそれを逆に小説に持ってきた、というような感じに見えるという意見は同意するところ。しかしゲームと違って1巻につき1人落としていくという形になるだろうから、続きも読んでいかないと全体としては何とも言えないんだろうなあというところがもどかしくもある。
読了日:12月21日 著者:鏡 遊
沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)
短編集。どの話も宇宙に対する眼差しが熱くしかし極めて理性的な登場人物たちが、地球外生物、惑星間飛行、恒星間探査、火星植民、宇宙飛行等の話で活躍する。ある意味これらは絵空事なのかもしれないが、そう思わせずに極めてリアルだと感じさせられるような様相が克明に書かれていたことは凄い。現実で実際にある理論を元に話が書かれているという点、「手は綺麗に、心は熱く、頭は冷静に」を信念に持っているかのような登場人物たち、野尻抱介のリアルにあり得そうだと読者に感じさせる筆力の高さ、これらがうまくかみ合った良質のハードSFだ。
読了日:12月22日 著者:野尻 抱介
ジョン&マリー ふたりは賞金稼ぎ (ハヤカワ文庫JA)ジョン&マリー ふたりは賞金稼ぎ (ハヤカワ文庫JA)
ちょっとHな冒険ラブコメディ。賞金稼ぎと副題にあり話の中心になっているのだが、そこまで重要ではなかった。むしろジョンとマリーのやりとりが楽しい。全体的にノリがよく、ジョンやマリー以外の脇役のキャラ付けもしっかりとなされていて、次のページをめくりたくなるほどの吸引力も兼ね備えた、高水準でまとまっている小説。筆者が言っているように絵もいい。ハヤカワから発売されていてライトノベルではないけれども、さくっと気軽にそして一気に読める作品であることは間違いないと思うので、ライトノベル好きな読書家にはお勧めしたい一品。
読了日:12月23日 著者:桝田 省治
黒い家黒い家
ホラーというより社会派サスペンス。生保業界の話題が物語の本筋に絡められており、かつ、不安や緊張を抱いた不安定な心理が描かれていることがその理由。重要なのは、本作におけるホラー性が読者を怖がらせる方法としてのホラーという側面よりも、社会派的なネタをサスペンスの方法で取り組んだ結果必然的に発生したものであるということ。そもそも家族を対象にした保険金殺人そのものが異常性を以って描写されなければ説得力がない訳で、その時点でホラー色を自ずと帯びるのだとも思う。いずれにせよ息もつかせずに読者を惹き付ける秀逸な作品だ。
読了日:12月29日 著者:貴志 祐介
神なる姫のイノセンス 2 (MF文庫J)神なる姫のイノセンス 2 (MF文庫J)
1巻と比べた時に主人公を取り巻く状況がかなみと契約した以外になんら変わっていない(新たな人物が出てくるなど)が、主人公のヒロインに対するツッコミや、ハーレムという設定を活かしたキャラクターのかけあい、若干エロい展開など、安定して読める一作。逆に言うと変化に乏しい感じも否めない。MF文庫Jらしい、ラブコメライトノベルだ。
読了日:12月30日 著者:鏡遊


 明日以降の記事で、2を発表します。もしかしたら選考に時間がかかるかもしれませんので。