今、ここに

 伊藤計劃、『虐殺器官』読了。
 ネタがばれない程度に短文の感想を書くならば……例えば、ネビル・シュートの『渚にて』が前世紀の核の恐怖に怯えた人類に読まれるべき小説であったとするならば、この『虐殺器官』は、今世紀最初に起こったテロの恐怖を身近に感じた人類に読まれるべきそれだと思う。
 しかしこれは何も反戦を謳っているわけではない。我々が、「今、ここに」生きていくための小説なのだ(多分ネタバレではないよねそうだそうだとも)。
 近い将来この小説は必ずや全世界に向けて発信されるだろうと確信している。作者が夭折なされたことが本当に悔しい。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)