Crescendo〜永遠だと思っていたあの頃〜 感想

あの素晴らしい  をもう一度


ゲーム期間はわずか5日間。卒業を控えたところから始まる。
義理の妹が出来たり、転校生と通学途中でぶつかったりということもなく、既知の面々―部活仲間、同級生、下級生、女教師、そしてねーちゃん―との学園生活最後―その時は永遠だと思っていた―の物語。

このゲームの良いところは、そういう日々をあえて飾らず、等身大で表した所です。
俺もこんな学園生活を送れていたら、違う人生を歩んでいたのかなあ。


・心理描写、構成が非常に上手い
思春期の感情を比喩や例えを用い小気味良い文体。
贅肉を一切削ぎ落とした必要最低限のシナリオ構成の中に、アルバムを捲るように懐かしみながら“永遠だと思っていた頃”を思い出す回想シーンが印象的。
そこに見出せるのは、ある種のノスタルジー
王道とは言い難いが、ノベルゲーの一つの完成形だと思いました。

余談ですが、ガガガ文庫より発売されている『此よりは荒野』を以前に読んだ時は「この作家はただの物書きじゃないな」と思っていました。
もうこの人はエロゲー業界からは引退しているようなのですが、水無神知宏は作品数が少ないので残念なところです。
過去にTRPG本を出しているようなので、ヤフオクで探してみようとか思ってます。

あと、「一つの完成形」って言葉はレビューですっげー使いやすい言葉だよね。


・Crescendoの名に相応しいBGM
ピアノ曲が殆どを占めています。
雰囲気がよろしい。


・青春系学園純愛作品として名作
萌えや笑いがなくても十分いける。
これが純愛作品でなくて何が純愛作品か。
ただし、Crescendoは「この世界観にずっと浸っていたい」と思えるものではないということ。
ここが例えば丸戸史明の『この青空に約束を』等とは違った趣を持っていると思います。

そこにはネバーランドは存在しなかった。
永遠だと「思っていた」とは、まさにこのことを表してるんじゃないかと。


一色ヒカルの本気を見た
「妹=アグミオン」なら「姉=一色ヒカル」なんじゃないかと思います。
こんな方程式が成り立つ程の好演技。
あと、「女教師=北都南」も追加で入れたいくらい。


・姉ゲーの金字塔という評価
きゃんでぃそふとの『姉、ちゃんとしようよっ!』の如く、メインヒロイン全員が姉というわけではないのだけれど、年上キャラのシナリオは必見。
シリアスとかドロドロとか修羅場とかそれなりにあります。


素晴らしいと思える日々にも必ず終わりはある。
でも、その日々はいつしか自分の中でかけがえのない”永遠”となり、日々が過ぎて行く。
俺にとって『Crescendo〜永遠だと思っていたあの頃〜』はそう思えたゲームでした。


Crescendo?永遠だと思っていたあの頃?

Crescendo?永遠だと思っていたあの頃?