地球の長い午後 感想

 地球に植物が跳梁跋扈したらという設定に作者の圧倒的な想像力を垣間見ることが出来るが、如何せんそれを表現している文章の形容が複雑怪奇であり、かつ、訳が古いこともあり、情景を中々想像しにくかった。ただし、それはプラスにも考えられ得ることは断っておかねばなるまいが。強烈で壮大な世界なのだろうけれども、個々の要素に具体的にのめり込めなかった。ただ、これほど「SFはやっぱり絵だねぇ」という言葉がしっくりくる作品はないことは確かに言える。また話の展開や主題は至ってシンプルであるためそこに新鮮さは見出せなかったが、古典SFであると考えれば至極妥当だろう。
 この作品にインスパイアされて書かれた小説はたくさんあると思う。知り得る限りでは、貴志祐介の『新世界より』や、椎名誠のSF三部作などがある。前者は非常に面白かった。後者は是非読んでみたい。


地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)